FUKUNAGA SEWING GUIDE

FUKUNAGA SEWING GUIDE

Prologue 旅は一針から始まる

Chapter1 縫製とは、縫うことだけではない

Chapter2 一つの製品ができあがるまで

Chapter3 1947年から続く技術

Chapter4 受け継がれてきた技術

Chapter5 新しい旅のはじまり

Epilogue 一針一針に想いを重ねる

Editor’s Note  編集後記

Prologue

旅は、一針から始まる

私たちは旅先で、美しい風景や歴史ある建物、伝統工芸に出会います

しかし、その土地の文化は、完成したものだけでつくられているわけではありません

一つひとつの製品の背景には、長い時間をかけて受け継がれてきた技術があり、

職人たちの手仕事があります

生地を裁ち、丁寧に貼り合わせ、一針一針縫い上げる

その積み重ねによって、商品は完成します

このGUIDEは、一つの製品を紹介するためのものではありません

ものづくりの現場を旅しながら、日本の縫製文化に触れていただくための一冊です

1947年の創業以来、受け継がれてきた技術

変わるものと、変わらないもの

そして、新たな文化との出会い

一針一針に想いを重ねながら、日本のものづくりは、今日も次の旅人へ受け継がれていきます

どうぞ、この小さな旅をお楽しみください

🇬🇧 Prologue

🎧 音声ガイド

Chapter 1

縫製とは、縫うことだけではない

縫製という言葉から、多くの人はミシンで布を縫う作業を思い浮かべるかもしれません

しかし、ものづくりの現場では、縫製はもっと多くの工程によって支えられています

工房には、生地や金具、裏地など、さまざまな素材が届けられます

それらの素材は、そのままではまだ一つの製品ではありません

必要な形に裁断し、厚みを整え、接着し、縫い合わせ、細部を仕上げ、最後に検品を行う

それぞれの工程には、それぞれの役割があり、一つでも欠けると品質は大きく変わります

縫製とは、「縫う」という一つの作業ではなく、

多くの工程と職人の技術が積み重なって、一つの製品を形にしていく仕事なのです

このGUIDEでは、その一つひとつの工程をたどりながら、日本の縫製文化をご紹介します

🇬🇧 Sewing is not just about stitching

🎧 音声ガイド

Chapter 2

製品ができあがるまで

裁断用のカッター
裁断用のカッター

裁断(Cutting)

最初の工程は裁断です

型紙に合わせて、生地や革を正確な寸法で切り出します

わずかな誤差でも完成品の品質に影響するため、高い精度が求められます

裏張りで、金糸のほつれを極限まで抑える
裏張りで、金糸のほつれを極限まで抑える

構造設計(Structural Planning)

必要に応じて、生地の厚みを確認します

折り曲げる部分や重なる部分の厚みを計算しながら

美しい仕上がりと使いやすさを実現しています

今回は金糸が解れやすいので、裏張りを丁寧にしてもらっています

生地同士を合わせる時に使用するのは極細のシール
生地同士を合わせる時に使用するのは極細のシール

接着(Bonding)

裁断された部材を、一つひとつ丁寧に貼り合わせます

接着は次の工程へ正確につなぐための、大切な役割を担っています

一番細い接着用シールを、丁寧に生地に貼りながら、少しずつ貼り合わせの作業です

ひと針ひと針、ゆっくりと正確に縫い合わせる
ひと針ひと針、ゆっくりと正確に縫い合わせる

縫製(Sewing)

部材をミシンで丁寧に縫い合わせます

縫い目の美しさだけでなく、強度や耐久性にも大きく関わる重要な工程です

熟練の技
熟練の技

仕上げ(Finishing)

縫製後は細部を整え、製品全体の美しさや使い心地を高めていきます

細かな仕上げの積み重ねが、完成度を大きく左右します

外張り・内張の大きさをミリ単位でずらすことで、ケースが閉じたままの状態になります

熟練の手作業でのみ実現が可能な製法です

手元の道具は、何年もの蓄積のもの決まってきた位置に
手元の道具は、何年もの蓄積のもの決まってきた位置に

検品(Inspection)

完成した製品は、一つひとつ丁寧に検品されます

縫製や仕上がりを細かく確認し、品質基準を満たしたものだけがお客様のもとへ届けられます

🇬🇧 The Process of Creating a Product

🎧 音声ガイド

Chapter 3

1947年から続くものづくり

1947年(昭和22年)

戦後間もない日本で、福永縫製はものづくりの歩みを始めました

時代とともに人々の暮らしや求められる製品は変化してきましたが、

丁寧な仕事を積み重ねる姿勢は、創業当時から変わることなく受け継がれています

一つの製品を長く愛用していただくために

見えない部分にも手を抜かず、一つひとつの工程を大切にする

その積み重ねが、多くのお客様からの信頼につながり、今日まで受け継がれてきました

福永縫製の歴史は、単に製品をつくり続けてきた歴史ではありません

技術を磨き、人を育て、時代の変化に対応しながら、

ものづくりの文化を次の世代へ受け継いできた歴史でもあります

創業者から二代目へ

そして二代目から三代目へ

受け継がれてきたのは、技術だけではありません

一針一針を大切にする想いもまた、世代を超えて受け継がれています

福永縫製では、初代、二代目から三代目へと、

機械や道具の使い方、作業の手順が受け継がれてきました

技術は、言葉だけで伝えられたものではありません

各工程を間近で見ながら、実際の仕事を通して経験を積み、

創業当時から続く工具ケースや包丁ケースの製造技術を身につけていきました

しかし、受け継ぐことは、昔のやり方をそのまま残すことではありません

三代目は、これまで培われてきた技術を土台に、

品質の向上と生産効率化を進め、より精度の高いものづくりへと進化させています

🇬🇧 A tradition of craftsmanship dating back to 1947

🎧 音声ガイド

Chapter 4

受け継がれてきた技術

ものづくりは、一人の力だけで続けられるものではありません

長い年月の中で培われた技術は、人から人へと受け継がれ、次の世代へとつながっていきます

福永縫製でも、創業以来受け継がれてきた技術や経験が、

日々のものづくりの中で大切に守られてきました

しかし、受け継ぐのは技術だけではありません

素材と向き合う姿勢

細部まで妥協しない心

そして、お客様に長く愛される製品を届けたいという想い

それらすべてが、ものづくりの現場で受け継がれています

一方で、時代とともに求められる製品や加工方法は変化し続けています

福永縫製が得意とするのは、厚みのある素材を縫い上げる「厚物縫製」です

他の工場では難しいと断られた仕事や、扱いにくい素材の相談も少なくありません

福永縫製では、そのような依頼に対して、できないと判断する前に、まず作り方を考えます

ミシンに取り付ける治具を自作し、各工程に適した道具をつくり、素材の硬さや厚みを調整する

既製品の機械や道具だけに頼るのではなく、一つの製品を完成させるために、

製造方法そのものをつくり出していきます

「 無い物は作る 世の中に貢献する 」

その姿勢が、福永縫製のものづくりを支えています。

この作業台から、全ては始まる
この作業台から、全ては始まる

福永縫製は、自らを「 縫製の最後の砦 」と考えています

自分たちが断れば、困る人がいるかもしれない

だからこそ、素材の特性を見極め、使い手の姿を想像し、完成までの打開策を徹底的に考えます

大量に作ることだけが、ものづくりの価値ではありません

日本製にこだわり、自分たちが作ったものを評価してくれる人のためであれば、

一個からでも製作する

福永縫製にとって、必要なのは量ではありません

一つの依頼に向き合い、一針一針に責任を持つことです

新しい技術を取り入れながらも、

創業以来大切にしてきた品質へのこだわりは変わることはありません

伝統を守ることと、新しい挑戦を続けること

その両方を積み重ねながら、福永縫製のものづくりは、

これからも未来へと受け継がれていきます

🇬🇧 Traditional Craftsmanship

🎧 音声ガイド

Chapter 5

新しい旅の始まり

2008年、リーマンショックによって、長年製造してきた工具ケースや

包丁ケースの受注が減少しました

その状況をきっかけに、福永縫製は新たなものづくりを模索します

厚物縫製の技術を生かし、これまで製品として使われてこなかった素材や、

役目を終えた素材に、新しい用途を与える

現在では「アップサイクル」と呼ばれるこの取り組みを、

福永縫製は言葉が広く知られる以前から続けてきました

素材の特性を探り、その素材にふさわしい第二の役目を考える

それは、廃棄を減らすためだけではなく、

素材をもう一度、人の役に立つものへと生まれ変わらせる仕事です

長い年月をかけて受け継がれてきた縫製技術

その技術は、時代とともに新しい出会いを生み出しています

さまざまな糸
さまざまな糸

その一つが、西陣織との出会いでした

千年以上の歴史を持つ京都・西陣織

その繊細な美しさを、日常の中で使う製品として形にするためには、

高い縫製技術と細やかな手仕事が欠かせません

伝統工芸と縫製

それぞれ異なる技術が出会うことで、一つの新しい価値が生まれました

こうして誕生したのが、「NISHIJIN TRAVEL COLLECTION」です

旅を楽しむための道具であると同時に、

日本の文化を身近に感じていただくためのコレクションでもあります

一つひとつの製品には、

西陣織を織る人の技術と、縫製を担う職人の技術、その両方が込められています

文化は、一人では受け継ぐことができません

多くの人の技術と想いがつながることで、新しい未来へと受け継がれていきます

そして、その旅は、これからも続いていきます

🇬🇧 The Start of a New Journey

🎧 音声ガイド

Epilogue

一針一針に想いを重ねる

一つの製品は、決して一人の力だけで完成するものではありません

素材をつくる人

裁断する人

接着する人

縫い上げる人

仕上げる人

検品する人

それぞれの技術と想いが受け継がれ、一つの製品となって、次の使い手へ届けられていきます

福永縫製が受け継いできた技術は、単に製品をつくるためのものではありません

人から人へ

世代から世代へ

そして、日本のものづくり文化を未来へつないでいくための技術でもあります

このGUIDEを通して、その旅の一端を感じていただけたなら幸いです

そして、この技術が出会ったもう一つの日本文化があります

千年以上の歴史を持つ、西陣織

その物語は、次のGUIDEへと続いていきます

🇬🇧 Putting my heart into every single stitch

🎧 音声ガイド

Editor’s Note(編集後記) 

三代目・福永佳久(ふくなが よしひさ)様との対話

最初に西陣織を見たとき

「 最初は着物の帯かな、と思いました 」

そう語る福永さん

西陣織の美しさは魅力的でしたが、その一方で、

裁断した瞬間に糸がほつれてしまうのではないかという不安もあったそうです

さらに、形にはできても、生地が抜けたり傷んだりする可能性も考えられました

しかし、美しい色柄は海外の方にもきっと喜ばれる

だからこそ、誰に届けるのか、どんな場所で販売するのかという

「 ペルソナ 」や「 タイミング 」まで含めて考えながら、

このプロジェクトに向き合ってくださいました

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最も苦労したのは「角」でした

試作を重ねる中で、最大の課題になったのは、パスポートケースの四隅でした

西陣織は厚みがあるため、一般的な返し縫いでは角の部分だけが何重にも重なり、

大きく膨らんでしまいます

最初は厚物縫製の技術で圧縮する方法を試しました

しかし、直線と角のつながりがわずかに湾曲し、

美しい仕上がりには届きませんでした

そこで採用したのが、福永縫製で「タマベリ」と呼んでいる製法です

柔らかな素材で外周を一つひとつ手作業で包み込みながら仕上げることで、

角は美しく立ち上がり、全体の厚みも抑えられました

さらに、

・生地ごとに玉縁の幅を変える

・角には余裕を持たせる

・二つ折り特有の「イセ取り」を行う

・最後の縫製には透明糸を使用し、西陣織の柄を邪魔しない

そうした細かな工夫が、一冊の仕上がりを支えています

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🇬🇧 When I first saw Nishijin-ori

🎧 音声ガイド

ひとつひとつ、人の手で

このパスポートケースは、一点一点、

手で裁ち、

手で貼り合わせ、

手で縫い上げられています

外周も、専用のラッパを使う量産方式ではなく、すべて職人の手作業です

「 量産品ではありません 日本製であり、福永製です 」

その短い言葉に、ものづくりへの誇りが込められていました

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これから挑戦したいこと

最後に、これから挑戦してみたい素材について伺いました

「 まだ知らない日本の素材があります

和紙や織物など、日本各地の素材と、廃材や製造時のロス材を組み合わせながら、

新しい価値を生み出したいと思っています 」

素材には、それぞれ役割があります

その役目を終えた素材に、新たな使命を与える

それもまた、福永縫製が考える”ものづくり”なのです

🇬🇧 Handcrafted, one by one

🎧 音声ガイド

Every Stitch Carries a Story.

The Journey Continues.

→ NISHIJIN TRAVEL COLLECTION GUIDE

→TERRA TRACE